つっぴ君と 初めてのお盆

つっぴ君は、この夏、初めてのお盆を迎えました。


真新しい秘密基地は、お盆仕様に整えられ、お供えも並べられました。頂き物のお盆の提灯も、水玉模様を走馬灯のように壁に天井に浮かべていました。真菰だとか藁だとかほおずきだとか蓮の葉を模した紙などで飾られ、果物の並べられた秘密基地に、つっぴ君はきっと「草とか紙とか、貧乏臭いのぅ」とため息をついていたことでしょう。お盆につきものの落雁も「変な色やのぅ。砂糖のかたまりやん。ぺっぺっ」と顔をしかめただろうと思います。


せっかくのイベントですから、つっぴ君が大喜びしてくれるものをと思ったのですが、まるごとお供えしたかった小玉スイカは売り切れでした。お供えも「精進料理など」と書いてあり、焼き鳥だのなんだのを並べる分けにもいきません。それでも手塚治虫コラボのミニチキンラーメンを「どうよ」とばかりに積んでみせました。大好物のおはぎは悪くならないように毎日新しいものに買い替えました。小さい瓶ビールも並べました。結果、私は毎日おはぎ4つと晩酌をすることになりました。


日曜日には、つっぴ君が新入社員として配属された際の部長の方、結婚に際しては仲人をしていただいた方が、つっぴ君を尋ねてくださいました。「よく食べて、よく飲んで、よく働いた。みんなに可愛がられていたね」と、とても褒めていただきました。部長にとっても、バレーボール部の取材とMac導入がつっぴ君の仕事として思い出深いそうで「楽しそうに一生懸命やっていた」と懐かしそうに語ってくださいました。


私の母、二人のいもうと夫婦、その甥っ子も、顔を出してくれました。基地を褒めてもらって、お供えのラインナップにうなずいてもらって、つっぴ君も鼻が高かったのではと思います。惜しむらくは「まるごとスイカ」の一言に尽きますが、来年こそ必ずまるまるしたのを「貧乏臭い藁」に乗せてさしあげたいと思っています。


お盆の間中、うちの猫は秘密基地にいたずらをしませんでした。昨夜、送り火を盛大に焚いて寝た真夜中過ぎのことです。かたこという音に目を覚ますと、秘密基地と壁の10cm足らずの隙間に、猫がはまり込んでいました。花瓶もお供えも倒さずにどうやってはまり込んだのか、あれだけ魅力的な藁だの縄だのほおずきだのがぶら下がっているときは我慢できて、何故今になって侵入を試みるのか不思議でした。基地に損害を与えないよう慎重に猫を救出して、一応お説教をして無罪放免にしました。そして、今しがた、大きな音をたてて基地の屋上に飛び乗る猫を現行犯で逮捕しました。昨日まで、いい子だったのに。お盆は猫も信心深くするのかもしれません。