つっぴ君と 文化祭

つっぴ君は、高校三年生の文化祭では喫茶店の装飾班班長でした。
確かクラス全体では運営班と装飾班の二つに分かれていて、装飾班の男子部、主にのこぎりなどを使用する設営のリーダーでした。教室をキッチンとホールに分ける図面を描いたりしていました。装飾班の女子は内装やポスターを担当していて、ポスターは私が描いた記憶があります。で、女子のリーダーは私でした。


設営は力仕事で人手がいったようで、スケジュールが押せ押せになっていました。つっぴ君は風邪もひいていて、進捗状況を確認すると「だいじょうぶ」としか答えてくれませんでした。つっぴ君はこの頃「だいじょうぶ」と「おっかしいのー」と「変なのー」が口癖でしたが、この場面で「だいじょうぶ」と言われると、かえって不安になったものです。アトリエ通いもあったので、それを聞くと「今週は休むんだー。だから、だいじょうぶ」と言うのです。とても不安になったものです。
それでも無事喫茶店は完成し、文化祭当日の朝を迎えました。


この喫茶店には新聞紙で作った巨大なペンギンのハリボテがあり、男子が代る代る中に入って、宣伝のために校内を歩いていました。子供に蹴り壊されることもなく、無事にマスコットの勤めを終え、みんなと一緒に写真にもおさまっていました。文化祭の後も卒業直前まで教室の隅っこにいて、最後は確か有志に見送られて焼却炉へと消えていきました。
このペンギンの写真、確かに見た覚えがあるのに、私の手元にはありません。男子しか一緒に写っていなくて、私はもともと持っていなかったのでしょう。残念です。


装飾班の仕事は男子女子で内容が違ったので、たいていは別に作業を進めていました。一緒に仕事をしたのは、文化祭も直前になってからだったと思います。喫茶店の壁かどこかに貼る大きいポスターを描いていたとき、「カレーが光ってるなんて変だよ〜」とある男子が言いました。すると、つっぴ君が「アートなのー。N.Yでは、流行ってるのー」と助け舟を出してくれました。男子も私も「そんなはずはない」と思ってはいたのですが、どちらを見るでもなくつっぴ君がそう言うと、なんとなく「ふ〜ん」と話がおさまってしまいました。


茶店の名前は「赤字」でした。そうそう、メニューは「カレーライス」でしたねぇ。