つっぴ君と バレーボール部

つっぴ君は、中学時代バレーボール部に所属していました。
小学生の時は野球をしていたので、何故バレーボールにしたのか聞いたら「人に向かって打たなくていいから」と答えてくれました。野球の時は人に向かって投げるのが怖くてファーストを守っていたのです。「バレーボールはコートの人のいないところへ打つからね」と言っていました。


部活はとても楽しかったようです。筋トレも走り込みも好きで、みんなで学校の周りを何周も走ったりしていたそうです。
ある時は、部室に憩いのスペースを作ろうと、ランニングがてら校庭の工事現場からブロックを少しずつ少しずつ部室に運び込み、道場から畳を持って来て、殺伐としたプレハブ部室内にちょっとした和室を神業リフォームしたとも言っていました。
また、ある時は男女共有で着替えの時は入れ替えになる部室に、部員をネットでぐるぐる巻きにして放置し、女子部員にたたき出されるのを見て笑ったりもしていたようです。


顧問の先生がたいそう厳しい方だったそうで、よく一列に並ばされてビンタをされたとも言っていました。試合前、まだミスもしていない、プレイ自体始まっていない段階で、バチンバチン叩かれたというのです。つっぴ君曰く「景気付け」とか「相手を萎縮させる・相手を威嚇する」ための作戦だったそうで、自分たちではなく相手チームから悲鳴があがっていたそうでした。そんな余興みたいにビンタされて嫌じゃなかったのかと思うのですが、聞くと「なんで?」という顔をして「全然」と答えていました。それも楽しかったようです。


大学生の頃、夜、つっぴ君の地元を歩いていると、足元で「先輩、こんばんわ」と声がしたことがありました。振り返るとお地蔵さんの祠の脇の暗がりに、M字開脚の青年の姿がありました。「おお」と返事をして通り過ぎるつっぴ君に「だれ?だれ?だれ?」と思わず足を速めながら聞くと、「バレー部の後輩」だそうでした。
私はとっても怖かったのですが、卒業して5年以上も経っても挨拶をしてくれるところを見ると、意外といい子だったのかも知れません・・・。


つっぴ君は時々思い出したように、バレーボールをしたがりました。ボールも買っていました。テレビで試合を観た翌日などに、引っ張りだされて二人で遊んだりしたものです。ただ、つっぴ君には私は「人」に見えないらしく、躊躇なくアタックされては、大笑いをされました。



休日に遊ぶのに買ったバレーボールです。凶器と化していました。