つっぴ君と ラーメンズ その2

つっぴ君は、博多ラーメン以外ではチャーシューメンを食べました。
これはラーメンではなく、チャーシューが好きだったからと言っていいでしょう。醤油だ塩だ味噌だということは問題ではなく、チャーシューが乗っている、この一点でのみオーダーを決めていました。


会津へ旅行へ行ったおり、喜多方へも足を伸ばしたことがありました。ラーメンの町、喜多方です。ラーメンマップを手に、名の通ったラーメン屋ののれんをくぐったつっぴ君は一言「冷やし中華」。冷やし中華を頼みました。時は9月、誰にとってもまだ残暑厳しい頃でした。
ただでさえ食べるのが速いつっぴ君は、ふぅふぅすることもなく、超速で冷やし中華を食べ終わりました。私がいつものようにチャーシューを分けてあげると、つっぴ君は一口食べて「・・・うまい!」。見ると痛恨という顔をしていました。冷やし中華にはチャーシューは乗っていなかったのです。そして、このお店の自慢はとろける三枚肉のチャーシューだったのでした。
私が注文したのはスタンダードなラーメンでしたが、そのお店でチャーシューメンを頼むと、その三枚肉チャーシューが満開の紫陽花のようにどんぶりを覆い尽くしていたはずでした。後日、デパートのラーメンイベントでも同じお店が出店していたのですが、つっぴ君はまたしても冷やし中華を注文してしまっていました。食べ終わって、初めてゆっくりショーウィンドーを見たつっぴ君は、自分がふたたび取り返しのつかない失態を演じたことに気がつきました。そこにはチャーシューの紫陽花が咲き誇っていたのです。


この時のチャーシューは焼豚というより煮豚でした。その後、圧力鍋でこのチャーシューを真似て作った煮豚はなかなか好評でした。角煮も気に入ってもらえました。やはり、つっぴ君にとってチャーシューがラーメンに乗っている必然性はなかったようです。でも、ラーメンであるならばチャーシューは乗っていることが必然であるのでした。



喜多方で食べ損ねたチャーシューメンは結局口にすることは出来ないままでした。でも、会津の仇は北海道で討てたようです。

これは視覚のトリックではなく、本当にチャーシューが大きいのです。