つっぴ君と 受験勉強

つっぴ君は、美大を受験するため、美術部でデッサンを習っていました。顧問の先生に指導していただいていたそうです。
3年生になって、その先生が体調を崩され、つっぴ君はアトリエに通うことになりました。つっぴ君は中学の時も、珠算教室とか書道教室くらいしか通った経験がなかったようなので、受験のためにどこかへ通うというのは初めての経験だったのではないでしょうか。あとで聞いた話では夏休みから夏期講座へ通って、1日7時間もデッサン、デッサンだったそうでした。


この頃、つっぴ君が使っていたものに練り消しがありました。デッサンするのに必要な消しゴムなのでしょう。私はちぎって分けてもらったそれでクラスメートの似顔絵などを作っていました。時々美大受験者どうしで何か話していても、何を言っているのかさっぱりわかりませんでした。とにかく、何時間もかけて鉛筆だけで、果物とかバケツとか彫像を描いた挙げ句「だめ!」と言われるなんて、恐ろしい試験だとだけ思っていました。


つっぴ君のアトリエと私の塾は同じ駅にありました。そのおかげで3回くらい道ばたでばったり会ったり、行きのバスが一緒になったことがありました。つっぴ君が画材を買いに寄り道をするのについて行ったこともあります。つっぴ君が私にはさっぱりわからない何かを何かの基準で選んだり探したりする様子を見ながら、私はシャーペンを買いました。
その時買ったものかはわかりませんが、3年生の頃、私が使っていたシャーペンが会社から返していただいたつっぴ君の文具類の中から見つかりました。つっぴ君曰く「低明度・低彩度のアトリエで叱られる色合い」のシャーペンでした。


デッサンに明け暮れていたはずのつっぴ君ですが、共通一次も受験をしていました。「お祭りみたいなものだから、記念にうけとく」と言っていました。後日、つっぴ君が担任の先生から私学の推薦を受けないかと言われていたことがわかりました。学校推薦だから絶対受かるからと言われたそうです。「これまで美大行きますとか言っといて、ここで私大って・・・」と、つっぴ君が断った大学に、私は通うことになりました。なんだかショックでした・・・。