つっぴ君と 休日奉行

つっぴ君は、休日起きだすと、まずソファに座り、コーヒーを飲み、テレビや新聞を読んでいました。そこへ「今日のご予定は?」と私が話しかけると「オケカラ」「何時?」「1時半」と答え、1時半にカラオケに出かけることが決まるのです。行き先や出かける時間は変わっても、やり取りは変わりませんでした。


こう書くと休日の過ごし方のすべてはつっぴ君が握っているようですが、そういうわけでもありません。私は1ヶ月くらいのスパンで、あらかじめ休日のリクエストを伝えてありました。例えば「母の日は実家でケーキ食べたい。それまでにプレゼントを買いにいきたい。妹がカラオケに行きたいって。」などです。それと、つっぴ君自身の「コーヒーそろそろなくなりそう。プリンターのインク切れとる」という情報や、その日のつっぴ君の気分、その日の天候、目が覚めた時間などが総合的に判断され「オケカラ」という決定が下されるのでした。


映画を観に行く場合は、まず封切り前に「(例えば)鴨川ホルモー観る?」と私が聞きます。すると「うん・ううん」ではなく「いつから?」と返ってきました。これに何月何日封切りと答えると「再来週以降」となるのです。で、じっと待っていると再来週以降の休日に「今日のご予定は?」「鴨川ホルモー」「4時の回と6時の回どっち?」「レイトショー」ということになるのでした。
特に予定がない日などは「君、そろそろ土とか草とか買いにいかんの?」とか「ユニクロ行かんでいいの?」と、私がテーブルに大きく広げているチラシを見て、聞いてくれました。


なんにも予定のない日、私はしばしば実家に遊びに行って過ごしました。母や妹とお茶を飲みながら、テレビを観たり、おしゃべりをしていると、つっぴ君の足音が聞こえてきました。玄関を開けて待っていると「こんにちはー」と、いつも少し遅れて、でも必ず顔を出してくれました。また、夕食の買い物にちょっと出かける時も、エコバッグを提げて「いってきます」と声をかけると「へーい」と言いながら、ささっと起きてついて来てくれました。


どこにでもついてきてくれるなぁと思ってはいたのですが、それにしても驚いたことがありました。妹と二人でデパートに洋服を見に行った時のことです。この時は出かけようとすると「へーい」とつっぴ君もついてくる様子を見せたので、「服買いに行くんだよ?デパートだよ?うんと待たされるし、つまんないよ?」と言ったのですが「おにいさんも行く」と聞かず、ついて来たのです。妹と私が買い物をしている間、つっぴ君は近くにいたり遠くにいたり、喫煙スペースにいたりして過ごし、買い物が終わると一緒にお茶を飲み、妹を送って帰宅しました。
後日、妹と話をしていたら「つっぴ君は、いっつもお姉さんと一緒にいたねぇ」と言われました。「どこでもついてきてたねぇ」と。やはり妹もデパートの件は特に印象に残っていたようでした。
「あの時、つっぴ君は楽しかったかなぁ?」と私が言うと、妹は「楽しかったんだよー」と答えてくれました。



富良野駅での写真です。旅行のときは、つっぴ君はそれほどお奉行様ではありませんでした。