つっぴ君と お友達と奥多摩湖

つっぴ君は、大学時代、学校のお友達と、そのお友達と、私と奥多摩へ遊びに行ったことがありました。大きなダムのあるところです。学校のお友達の車に乗せてもらって行ったのでした。


この時、つっぴ君は少しばかりの不安を抱えていました。それは私に社交性がないということでした。つっぴ君の相方は、車に乗せれば眠ってしまうし、何かしゃべっても声が小さく相手に聞こえないし、仮に全力で愛想よく振る舞ったとしても人の半分くらいにしか達しないのです。さらなる不安材料が、お出かけを目前に追加発表されました。お弁当を持っていくことになったのです。それを聞いて、なんの危機感もない様子でうなずく私に、つっぴ君は本当に不安になったようでした。


「君、何作って行くつもり?」ある日、つっぴ君は言いました。
これは、とても珍しいことでした。それまで一度もつっぴ君は私に「何を着ていくつもりか」「何をするつもりか」「何を言うつもりか」「何を食べるつもりか」という質問はしたことがなかったからです。私が「オムライス風のおにぎり」と答えるまで、つっぴ君はほぼ毎日この質問をしました。そして、その答えを聞いて、つっぴ君の不安は頂点に達したようでした。
「それ・・・どういうの?」今ではコンビニでも見かけるオムライスのおにぎりですが、当時は商品として目にすることはなく、私も「こんなふうのはどうだろう」と思っただけなのです。「チキンライスを薄焼き卵で包んで、おにぎりにするの」「それ・・・どこかに本当にあるの?君の頭の中だけにあるの?」ここへきて、やっと私はつっぴ君の不安に気がつきました。オムライスはおいしいんだから、それがおにぎりサイズになるだけだと力説しましたが、どうやら「想像上の産物らしい」とわかったつっぴ君は言いました。「明日、作ってみなさい」
私は「おにぎりのリハーサル」をすることになったのでした。


星2つ程度をいただいたオムライスおにぎりは、無事に奥多摩デビューを飾りました。もうお一人のお弁当は和風で、照り焼き風の根菜の牛肉巻きがとてもおいしそうでした。それを見て私は「あ、頑張ってかわいらしいものにしなくてもよかったんだ」と思いました。私も相当考えた挙げ句のオムライスおにぎりだったのです。
もし、私がこういう時、頑張っていろいろ想像するのではなく、お弁当の本を買うという判断ができる子だったら、つっぴ君も安心だっただろうと思います。でも、この傾向は後々になっても改善されることはなく、いざという時につっぴ君の心配は尽きることはありませんでした。


この時のお出かけはとても楽しかったです。つっぴ君とお友達と一緒に半日を過ごすという経験は、実はこの時のお友達としかありません。象列車のビデオ撮影の時も、このお友達と一緒でした。お友達といる時のつっぴ君は、いつもと少し表情が違い、それを見るのも楽しかったのです。笑っておしゃべりをしている写真や、ほっぺを膨らませている写真が残っています。



湖上に誇らしげにバヤリースを掲げるつっぴ君です。
確か写真撮影の技術の何かを何かしていたんだったと思います。