つっぴ君と 大好きなピクミン

つっぴ君は、ピクミンが好きでした。


ピクミン」とは、やはりつっぴ君の好きな任天堂のゲームです。とても人気がありました。
ピクミン」ではプレイヤーは未知の惑星にたった一人不時着した宇宙船のパイロット・オリマーになります。オリマーは惑星の現住生物ピクミンを操り、壊れた宇宙船を修理して惑星を脱出しなければなりません。ピクミンには種類があり、それぞれ特性があります。ピクミンは増やすこともできます。必要なピクミンを増やしつつ、使いつつ、惑星各地に散らばった部品を集めてゆくのです。


キャプテンつっぴ君は、毎夜毎夜ピクミンを操っていました。ホイッスルで集合させ、行進させ、ある時は橋を架けさせ、ある時は川を渡らせていました。ピクミンを発芽させ、育て、引っこ抜いては列に加えていました。惑星にはピクミンを襲う敵性現住生物もいました。つっぴ君はピクミンに爆弾を持たせ、敵を攻撃させ、ある時は自爆させることも厭いませんでした。家にはピクミンを呼ぶホイッスルの音、ピクミンの発する奇妙な脱力を誘うぴよぴよ音、そんなピクミンの戦闘の音に爆発音が響き渡っていました。


ピクミンは全員が全員、きちんと言うことを聞いてくれるわけではありません。命令が行き届かないと、ごろごろしたり、いじいじしたり、働くピクミンを横目にさぼったりもしました。逃げろの命令が届かなければ、敵から逃げ遅れたり、とんでもない方向へ逃げて助かりません。迷子になるピクミンもいました。迷子のピクミンは日没までに家に戻さないと死んでしまいます。つっぴ君はそういうピクミンを見つけると「君みたいやのぅ」と言い、必要以上にホイッスルを吹いててんてこ舞いさせては笑っていました。


ある晩、つっぴ君は「終わったでー!」と声を上げ、座椅子で大きく伸びをしました。満足げに惑星を飛び立つ宇宙船を見送り、エンディングロールを見終わると、いそいそとでパソコンを起動させました。クリアしてなお「ピクミン」情報をチェックしようというのです。直後、「嘘やー!!」とパソコンの前でつっぴ君は大きな声をあげました。そこには「ピクミン」情報を交換する掲示板が開かれており「17日間でクリアした」という書き込みがされていたのです。「うそだ!絶対できるわけがない!」というつっぴ君に激しく同意する「嘘だ嘘だ」「証拠を見せろ」という書き込みが次々と書き連ねてありました。
私は、まさかつっぴ君も「嘘や嘘や」と書き込みをするのだろうかと、つっぴ君の背中を見つめていました。しかし、つっぴ君は静かにパソコンの電源をおとすと、再び座椅子に転がりました。そしてゲームの電源を入れたのです。


数日後、またも無事帰還の途についた宇宙船を見送り、「嘘じゃなかった・・・。17日で終わらせられるで」と、つぶやくつっぴ君の姿がありました。その後、つっぴ君は16日、15日と記録を更新してゆきました。もちろん掲示板の記録も次々塗り替えられてゆきました。いつかトップをとる気なのだろうかと、見守っていましたが、ある時掲示板に「ピクミンを殺さずにクリアすることが出来る」という情報を発見したつっぴ君は「もういい。おにいさん無理」と、静かにコントローラーをおいたのでした。


ピクミン」は引退したつっぴ君でしたが「ピクミン2」となると別でした。「ピクミン2」ではオリマーには部下がついていました。つっぴ君は、その部下を指差して「君そっくりや」と言うと、また毎夜毎夜ホイッスルを吹く生活に戻っていました。



ピクミン」のCMソング「愛のうた」です。名曲です。
http://www.youtube.com/watch?v=Pm199r3Kxdc