つっぴ君と、制服

つっぴ君は、高校生の頃は真面目な生徒でした。社会への反抗とか、若さ故の暴走とか、行き過ぎた自己アピールなどとは無縁なタイプに見えました。高校生なのに、顔に「中庸」と書いてあるような落ち着いた人だと、私は思っていました。


つっぴ君と私の通っていた高校は、緩さで知られる自由な学校でした。社会への反抗を旗印に掲げる生徒はいませんでしたが、暴走気味とか、行き過ぎ気味とか、自由過ぎな生徒たちはちらほら見え、かつ、それが特別には目立ちませんでした。出る杭は打たれない環境だったのです。
その中で、つっぴ君は「ごく普通」に過ごしていました。バイトしたり、部活に励んだり、お友達とつるんで遊んだりしていたようでした。何か特別なことをするわけでもありませんでした。でも「真面目そう」に見えたのです。


一つには、つっぴ君の制服の着方があったのではないかと思います。自由な私たちは、割と何を着ていてもよかったのです。男子は制服のスラックス、女子は制服のスカートをはいていれば、上は何を着ていても大丈夫でした。もちろん制服の上下を着ている生徒もいましたが、制服100%の生徒は非常に少なかったと思います。
そんな中で、つっぴ君は制服を上下できちんと着ていました。
そういえば、中学時代の写真でも高校時代のものでも、つっぴ君は制服の時は「詰め襟のホックも閉めている、学帽もかぶっている、校章はもちろん何か名札のようなものもつけている」姿で映っていることが多いのです。
たぶん「何故、制服着てるの?」と聞いたら「制服だから」と答えたでしょう。そこには「暑いからTシャツでいいや」も「制服のシャツかっこわるくない?」とかはなく、ただお坊さんが作務衣を着るような心持ちだけがあったのだろうかと思います。


冬のある朝、登校した私は教室につっぴ君を見つけて驚きました。つっぴ君は青いダウンジャケットを着ていたのです。いったいどうしたのか尋ねたところ「母親が買ってきた」ということでした。つっぴ君が制服以外のものを着ている姿に驚くと同時に、もっこもこになって椅子に座っている姿になんとも微笑ましい気持ちになりました。
きっと受験前に風邪をひかせないようにというお母さんの気遣いだったのでしょう。でも、つっぴ君がお母さんが買ってくれたものを「はい」と着るのは、この辺りが最後になったのだとも思います。


後になって、中学時代のエピソードなどを知るにつれ、つっぴ君もずいぶんやんちゃだったのだとわかりました。それでもなかなか「優等生」のイメージは拭いきれませんでした。本来の性格は、やはり「真面目」だったのだと思います。


ずっと後になって高校時代の話をしていた時、つっぴ君に「君のこと、不良だと思った」と言われたことがありました。理由を聞くと「学校の上履き履いていなかったから」と言われました。私は中学校の体育館履きを高校の上履きに履いていたのです。それは反抗でもなんでもなく、「まだ履けるから」だったのですが、不良視されかけていたとは思いませんでした。「上履きが違うと不良・・・?」と愕然とさせられたつっぴ君の一言でした。



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