つっぴ君と 陶芸部

つっぴ君は、大学では陶芸部に所属していました。とは言っても幽霊部員だったらしく、どんな活動をしていたのか聞いたことはありませんでした。


一度だけ、釜の温度管理をするというのを見に連れて行ってもらいました。一晩中火を絶やしてはいけない上、火は薪で起こすということでした。つっぴ君と一緒に部室に挨拶に行くと、大変だし危ないし、女の子に一晩中火を焚けという訳にはいかないと、しばらく見学させていただくだけになりました。男の子で部員のはずのつっぴ君はというと、「じゃ!」と私と一緒に失礼していました。結局、つっぴ君が薪と格闘する姿を見ることはありませんでした。


学祭などで作品を展示したりしていなかったのかと思うのですが、陶芸作品を見せてもらったこともありません。学祭では部で運営しているという居酒屋にいきました。一緒に食べたり飲んだりはしましたが、つっぴ君がオーダーをとったり品物を運んだりと働く姿は見ませんでした。


「だって幽霊部員だから!」と宣言していたつっぴ君ですが、そのわりに旅行へは行っていたようです。早春房総ドライブもそうですし、平家落人の里湯西川温泉にも行っていました。湯西川温泉から帰ってきたときは「山椒魚食べた!」と興奮していました。「串に刺して囲炉裏で焼くんだ。黒焼きって言うの」というつっぴ君に「おいしかった?」と聞くと「・・・薬みたいなものだから」という言葉が返ってきました。
囲炉裏端で食事をしていると甲冑に身を包んだ落ち武者が現れて、お客人をもてなすんだとも話してくれました。「いいなぁー」と私が行きたがると「中はただの人だもん。落ち武者、なんだかきまり悪そうにしてた」と、また興ざめなことを言いました。そんなに冷めた目で見ていたのかと思うと、そうではなかったようです。その後も何年も「平家の落人見たでー。落ち武者がおるんやでー」と栃木とか温泉というと自慢をしていました。


昨日、つっぴ君のアトリエ仲間で大学時代のお友達の個展におじゃましました。お友達から聞いた陶芸部でのつっぴ君は、みんなで何かしようかとなると「それ、犯罪じゃん」と身も蓋もことを言ったり、いつの間にかいなくなっていたりと、ずいぶん自由に振る舞っていたようでした。「頼まれると断れないつっぴ君」とは、またずいぶん違う様子に、大学時代は「悪つっぴ君」キャラだったのかなぁとも思いましたが、「みんなでしようとしていた何か」を聞くと「つっぴ君は普通だっただけかもしれない」と思わざるを得ませんでした。
でも、チェーンソーとか斧とかは、つっぴ君好きだったと思うんだけどなぁ。




居酒屋のチラシです。二枚組なのですが大きすぎて店名部分しかスキャナーに乗りませんでした。