つっぴ君と 不思議な仲間たち

つっぴ君は、高校3年生の時、私と同じクラスになりました。
私たちのクラスは何故か2週間毎に席替えがありました。くじびきでした。2学期の席替えでつっぴ君は私の斜め前の席になったのでした。


同じ美術部にいて2年の時に同じクラスだった私の友人によると、つっぴ君は「とっても無口でおとなしい子」だったそうです。なので、普通だったら斜め前の席のつっぴ君と私がお話をできたはずはありませんでした。でも実際は、つっぴ君もつっぴ君の隣の女の子も、休み時間などは後ろを向きっぱなしでした。つっぴ君とつっぴ君の隣の女の子は、私と私の隣の男の子がぺちゃくちゃおしゃべりをする様子に、巻き込まれるようにして後ろを向いてしまっていたのでした。


たった2週間だったのに、4人で恐ろしくたくさんおしゃべりをしました。つっぴ君は口数は多くはありませんでした。身体を横に向けると椅子の背中に肘を乗せて、ほおづえをついて半分隠れた口で、時々「変なの〜」とか「おっかしいの〜」とチャチャを入れていました。時々いじられては「いいの〜」とのんびりした口調で一言答えていました。
授業中は小さな手紙を回していました。手紙の内容は半分以上はフィクションで、つっぴ君には新しいニックネームや新しいキャラが与えられていました。


2週間後には、また席替えがあり、4人はバラバラになってしまいました。その後は、今度は私が斜め前になったり、隣になったりしましたが、いつでも手紙は回っていました。


最後の席替えもくじびきでした。この時に隣の席になれたのか、実は覚えていません。この抽選の際、女子の間で不正が行われました。あちこちで取引があったことや、その相談に乗ったことは覚えているのに、自分のことは忘れてしまったのです。「記憶にございません」ってあるものだなぁと思っています。