つっぴ君と いじわる奉行

つっぴ君は、まごうことなきSだったので、私や猫はきめ細やかないじめをしばしば受けました。


立っていれば足を踏みますし、寝ていれば額の皮をぐいーっと親指などで押し上げ、眉毛を変な角度にしますし、思い出したように「すしたろうって言ってみ」と命じては、私の「すしたろう」の発音が変だと笑ったりしました。ライターを持てば火をこちらへ向けますし、銃を持てば銃口をこちらへ向けました。私の実家へ遊びに行った帰りは、間違いなく玄関で私の靴をぽーいと庭へ投げました。技をかけられて、私が「いたいよー」とか「やめてよー」と言っている姿は、私の家族にもおなじみの風景でしたので、家族も一緒になって笑っているのが常でした。


つっぴ君のいじわるで一番驚いたのは、つっぴ君にとっては一番面白かったのは、マンションのエレベーターに私が挟まれた時だと思います。エレベーターに乗れば必ず「閉」ボタンを押して私の目の前で扉を閉めるいじわるを欠かさなかったつっぴ君でしたが、ある日、本当に私がエレベーターに挟まったのです。ただじたばたする私を見ながら、つっぴ君は「開」ボタンを押すこともなく、ひーひー真っ赤になって笑っていました。しばらく私がきゃーきゃーいうのを楽しむと、つっぴ君はようやく扉を開けてくれて言いました。「エレベーターのドアはね、ここを触ると開くんやで」そして振り返って、こう言いました。「あそこには防犯カメラがついてるんやで。今の録画されとるで」そして、また吹き出しては大笑いをしていました。


あるお祝いの席で、つっぴ君が私をぺんっと叩いた時、私の親戚が「まぁ!叩いてはいけませんよ!」とつっぴ君をぴしっと注意したことがありました。その方は教師生活40年、筋金入りの宝塚ファンでした。すっかり大人になっていたつっぴ君は、まさしく先生に怒られるというシチュエーションが久々だったのでしょう。帰宅してから「怒られちゃった」と舌を出して笑っていました。


つっぴ君は自分がいじわるをする理由を「君には警戒心がまるでない。それでは生き残れないで。だから、おにいさんが訓練してやってるんやで」と話していました。また「いじわるやないで。愛情やで」とも言い、自分のしたいじわるに思い出し笑いをするのでした。



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