つっぴ君と 妻の服装 

つっぴ君は、あまり私の服装やヘアスタイルに文句は言いませんでした。斉藤由貴さんみたいになってくれと言えば角が立ちますし、「音楽の先生みたいなかんじ」が好きだと一度だけ聞いた覚えがあります。


ある日待ち合わせの場所にやってきたつっぴ君のカローラが、私を見るなり加速して角を曲がって消えていったことがありました。私がソバージュにしていたからです。そのまま待っていたら、一周して帰ってきました。無事お出かけはできましたが、丸刈りにしないと許してもらえないかと思いました。


ある時は帰宅して私を見るなり「さる?」と言いました。私がショートカットにしていたからです。つっぴ君はおさるが大好きなので、強ち悪口とも言えませんが、褒めてもいません。半時間ほどご機嫌で笑っていたので、まぁ、よかったのではないかと思います。


洋服を買いに行くと、文句は言いませんが口出しはずいぶんしました。「地味」「子供っぽい」「君、いくつや」です。じゃぁ、どうしろというのか聞いたところ、「しましまTシャツ着て、デニムのサロペットはいて、白いギター持ってごらん」と言うのです。つっぴ君のチャチャに店頭での買い物を諦め、ネットで買い物をしたこともありました。届いたブラウスが想像以上のピンク色で愕然としていると、声を殺して笑っていました。


最終的にはモスグリーンのものを「これ、どう?」と見せると「ええんちゃう」と答えました。そのため私の手元には緑色のものばかりが増えていきました。


きれいになれとか、痩せろとかは言わなかったつっぴ君は(痩せろは一度言って凝りたようです)、私が太ったの、老けたのと嘆いていると「ええやん、ええやん。のぅー」と声をかけてくれました。「これから、どうなって、どう思われたいっていうんやー」とも言いました。
「それもそうかも」と思っていましたが、最近アルバムを整理していて、大学生の頃は女の子らしい服装をしていたことに気がつきました。この頃は「どうなって、どう思われたい」というのがあったのでしょう。「音楽の先生みたいになって、自慢の奥さんになりたいんやー」と答えればよかったなぁと少し思います。