つっぴ君と 誰かのお墓参り

つっぴ君は、ずいぶん前に会津に旅行へ行ったことがありました。
秋の連休に「会津歴代藩公祭」というイベントがあるのです。武者行列や薪能などのイベントがありました。いつもは旅行に行くとなると天気や混雑を心配するつっぴ君ですが、この時は行きたいというと、すぐに「行く」と賛同してくれました。


郡山で新幹線を降りて在来線に乗り換え、つっぴ君が最初に連れて行かれたのは「土津神社」でした。お参りをし、猪苗代湖を見下ろして、つっぴ君と私は会津に向かいました。
会津に着くと、つっぴ君はまた名も知らないお寺へ連れて行かれました。お寺をみるのかな?と思っていると、私はお寺の裏の坂を上ってゆきます。そして誰かのお墓の前で立ち止まりました。「貫天院殿純忠誠義大居士」それは近藤勇のお墓でした。同じお寺には土方歳三の墓碑もありました。
まぁ、新撰組なら全く知らないわけでもないと思ったつっぴ君が、次に連れて行かれたのは木々の生い茂る山道を上った先、会津藩松平家墓廟でした。新撰組のお墓は日の射す明るい墓地にあり、他にも墓参客がいて、そこそこ賑わっていました。しかし、ここには他に人影もなく、木漏れ日だけがかすかに差し、聞こえるものは風の音ばかりです。墓前にも小さなミカンが一つ置いてあるだけでした。「ここ・・・君の他にくる人いるの?」つっぴ君には、そこは観光スポットには見えなかったようでした。
その後は飯森山で白虎隊のお墓参りでした。武者行列は翌日とはいえ、初日は赤の他人の墓めぐりとはつっぴ君は思っていませんでした。


お寺に立ち寄った時、近藤勇のお墓を前に手持ち無沙汰に立っていたつっぴ君は、私がしゃがんで手を合わせると並んでしゃがみました。そして「君、何も持ってきてないの?」と言いました。お線香とかお花とかお供えできるものを、私は何も持っていませんでした。すると、つっぴ君は「だめやなぁ」と言いながらタバコをくわえ火を点けると、墓前に供えてくれました。自分は興味も関心もなくても、人が大事に手を合わせる場所に、つっぴ君は敬意を払ってくれたのです。てっきり呆れられていると思ってた私は、それがとっても嬉しかったのでした。また、自分もこういう風にならないといけないなぁと思いました。


新撰組には興味のなかったつっぴ君ですが、この後、京都壬生寺、北海道函館と遠いところばかり新撰組のお墓参りに連れて行かれました。つっぴ君が新撰組に関心を持つようになったのは、それからずいぶん後のことで、三谷幸喜が脚本だというので観た大河ドラマ新撰組!」がきっかけでした。近いのだから日野にも一度行こう、深大寺でおそばも食べようと話していたのですが、実現はしませんでした。

つっぴ君にとっては「早すぎた会津」でした。