つっぴ君と つっぴ家のおかあさま 2

つっぴ君は 大学生の頃、滅多に家族と口をきかなかったそうです。高校生の頃も中学生の頃も、そうだった言います。家でどう過ごしていたのかというと、自分のお部屋にこもって、何を言われても知らーん顔をしていたようでした。


つっぴ君の家は、常に来客がありました。何かのおりに親戚が訪ねてくるのはもちろん、日常的に昼間は近所の子供、夜は近所の大人の方々がつっぴ家の居間にいたそうです。つっぴ君はそれが少々煩わしかったのでしょう。また来客があると、お父さんが「来い、来い」「顔出せ、顔出せ」というのが気に入らなかったようでした。部屋の戸をぴったり閉めて、断固居間には出て行かなかったそうでした。


そんなつっぴ君が家族と何か会話をしていると思うと、それはたいていお母さんとの口喧嘩でした。一声目はお母さんでした。声は大きく、一方的ではありますが、この時点では喧嘩は売ってはいません。でも、つっぴ君は即カチーンとくるらしく返す言葉で戦闘開始になりました。数回の丁々発止のやり取りの後、お母さんの「なーに怒ってんだか、この子は。大きな声出して。」の一言で、つっぴ君の完敗。戦闘終了となるのです。お母さんとしては、つっぴ君とお話がしたいだけなので、十分な戦果をあげて大満足でした。つっぴ君は高笑いで去るお母さんを悔しそうに見送っていました。


卒業旅行のお土産をつっぴ君に託けたことがありました。「渡してくれた?」と後日聞くと「怒られた・・・」と返事が返ってきました。つっぴ君が私からのお土産だといってヨーロッパ土産のお菓子を渡すや、お母さんは言いました。「外国旅行をするようなお家のお嬢さんとは、おつきあいはさせられない!」家柄が違いすぎると言うのだそうです。つっぴ君は、私は両親に連れて行ってもらったわけではなく、自分でバイトした貯金で旅行に行ったんだと説明しました。「まぁ、しっかりしているねぇ」と一度は収まったそうなのですが、再び「あの子は自分でバイトして旅行に行ってるっていうのに、あんたは何してるの!バイトバイトって毎晩遅いくせに、何に使ってるんだか!!」とお説教が始まり、結局喧嘩になったのだそうでした。


つっぴ君をして「あの人たち、言葉通じないから」と言わせるラテン系浪花節のお母さんは、理論派を自認するつっぴ君には到底勝ち目のない存在だったようでした。
そんなお母さんを、つっぴ君はしばしば「あの人は本当のお母さんじゃないから。住み込みの近所のおばさん」などと言っていましたが、つっぴ君はお母さんに瓜二つでした。