つっぴ君と 省エネ無口主義 2

つっぴ君は、あまりおしゃべりではありませんでした。ずーっとずーっと前は家族の話や子供の頃の話、中学時代の話などをしてくれましたが、その時だって決して饒舌ではありませんでした。そんなつっぴ君が、とても快調にたくさんしゃべったことがありました。


結婚してしばらくたったある日、みなとみらいへ遊びに行った帰りに、珍しく二人でお酒を飲みました。いつもは食事にビールを1杯くらいで、二人で飲むということはありませんでした。どういう経緯でそうなったのか覚えていませんが、とにかくしこたま飲んだようです。
お店を出てランドマークを抜けて桜木町駅までの道のりを、つっぴ君は上機嫌で歩いていました。私は結婚するまでプロレスファンだということを秘密にしていたつっぴ君に「誰のファンなの?」とか「どういうところが好きなの?」とか、とにかくプロレスの話を根掘り葉掘り聞いていました。普段は「何故?どうして?」という質問を嫌うつっぴ君が、この時は「そうねぇ〜」とにこにこしながら話してくれました。


はっきり覚えている訳ではないのですが、たぶん私は「つっぴ君を酔っぱらわせてたくさんしゃべらせよう」としていたようでした。話してくれた内容は覚えていないのに、つっぴ君がよくしゃべる様子に「うまくいったぞ!」と作戦成功を喜んでいた気分は今も残っているからです。
この時以外でも、酔っぱらってご機嫌なつっぴ君は見たことはありました。でも、この時のほっぺを赤くして、にこにこして、少し上を向いて思い出し思い出し「大好きなプロレス」について語ってくれたつっぴ君の酔っぱらいぶりが、一番記憶に残っています。


お薬の関係でお酒が飲めなくなってからは、外で食事をする時はノンアルコールビールのあるお店を探しました。家で何かのお祝いをする時は、ノンアルコールワインを探したり、甘くない炭酸入りのグレープジュースを買ってきて、ワイングラスで乾杯したりしました。一度お好み焼き屋さんのメニューに「こどもびいる」を見つけた私たちはノンアルコールビールだろうと思い「これはいい、飲もう、飲もう」と注文しました。乾杯して一口飲んでびっくり。甘いのです。ちょっと考えればただの炭酸飲料だとわかったはずですが、つっぴ君の飲めるビールを探していた私はノンアルコールビールのレトロネーミングのものだと思い込んでしまったのです。瓶を裏返してラベルを確認するまで、何故甘いのか理解できませんでした。
「サイダーだね」「サイダーより甘いね」せっかく見つけたと思ったのに、となんだか裏切られたような気分でした。でも、お好み焼きはいつも通り完食しました。


今はなんだって飲めるつっぴ君です。いつか沖縄に行って、この前の旅行では飲めなかった泡盛を一緒に飲みたいなぁと思っています。



こどもびいる。わかっていて飲めば、おいしいです。
http://www.tomomasu.co.jp/kodomo/