つっぴ君と つっぴ家のおとうとさん

つっぴ君は、二人兄弟のお兄さん、おとうとさんとは1学年違いでした。おとうとさんによると「中学以来まともに話もしていないなぁ」ということでした。


兄弟でずいぶん性格が違っているようでした。つっぴ君は無口、おとうとさんは社交的な性格にみえました。おそらく、つっぴ君が部屋にこもっている間、同じ部屋で寝起きをしていたおとうとさんは自分の部屋に入れず、お客さんが絶えない居間で過ごす時間が長かったからではないかと思います。もともと居間で過ごせるだけの社交的な正確だったとも考えられます。


おとうとさんと「中学以来まともに話もしていない」つっぴ君でしたが、実はしばしばおとうとさんの話をしてくれていました。子供の頃の話とか、最近の話とか、ちょっとしたいじわるをした話などでした。おとうとさんは中学入学の際に、つっぴ君と同じバレー部に入部しようと思っていたそうでした。ところが、それを知ったつっぴ君が猛反対をし、結局バスケ部に入ることになったのです。「おにいちゃんと一緒の部に入りたいなんて、かわいいのに」と私が言うと「全然!大迷惑!!」と、つっぴ君はあらためて憤慨していました。


つっぴ君の家に遊びに行った時のことでした。部屋に通してくれたつっぴ君は、自分は掃除しておいたのに、おとうとの机周りが散らかってると怒っていました。「汚いなぁ!あの机、見て!」と言いながら、おとうとさんの机の解説を始めました。なんだかんだと文句を言いながら「でも、あれはよく出来てると思わない?」と壁にかけられた木の板を指差しました。
それは一枚の木の板を切って作った木製パズルでした。美術の時間に作ったのでしょう。きれいに切り出して上手だねぇと私が眺めていると「あれ、よく見るとパーツがアルファベットなんだ」とつっぴ君は言いました。アルファベット一文字一文字がぴったり一枚の板に組み上がるように作ってあったのです。「あー、本当だ。すごいねぇ」と私が感心すると「でしょ。あれだけだけどね」とつっぴ君のおとうと自慢は終わったのでした。


おとうとさんがお店を出すことになった時、お店のロゴデザインをつっぴ君が作りました。先日おとうとさんが、その時のことを話してくれました。「家にファックスが届いたんだけど、『お世話になっております。先日承りましたロゴデザインの件ですが、2パターン用意いたしましたので、ご確認いただけますようお願いいたします』みたいな、ものすごく事務的で仕事モードの文面で、びっくりした!!」ということでした。きっと、照れくさくて仕方なかったのでしょう。
つっぴ君のロゴデザインはめでたく採用され、今、おとうとさんのお店の店頭を飾っています。