つっぴ君と 夜のウォーキング

つっぴ君は、時に「ダイエットしないとのぅ」と思うことがあったようでした。


結婚して間もない頃、定期的にぷらぷら私の実家まで歩くというウォーキングをしていた時期がありました。つっぴ君は体重が気になるとはいえ、まだまだそう太っている訳ではありませんでした。膝も腰も痛くはなく、息切れもそうはしませんでした。1ミリも歩くのがイヤな私と違って、時々「歩こうやー」と私を散歩に連れ出しました。その流れで始まったのかもしれません。


ある晩、何も知らせずに私たちは私の実家を訪れました。もう9時とか10時を回っていたと思います。「あらあら」という母に、ウォーキングのついでに寄ったと言い、テレビを観ていた父に「こんばんは」と挨拶をした私たちは、そのまま家に上がり込みました。実家には私が高校生の頃からの家族である猫たちもいて、行けば猫とも遊ばなければいけません。私が猫を構っている横で、つっぴ君にはどんどん食べ物飲み物が供されました。結局、私たちは「折り返し地点」であるはずの実家にすっかり長居をしてしまったのでした。
帰り道ももちろんウォーキングではありましたが「これはいかんね」というのが、私たちのウォーキング一日目の感想になりました。


その後も何回か夜の実家詣では続きました。しかしダイエット効果が疑わしいことや、観たいテレビがあるとか、平日はもう疲れたなどの理由が積み重なって、自然消滅してしまいました。


私の実家の帰り道では、つっぴ君は決まって空を見上げていました。舅姑にいじめられて、涙がこぼれそうだったからではありません。夜道では空を見上げるのが、つっぴ君の癖だったのです。私たちのマンションは周りをぐるっと街灯に囲まれて、いつもとても明るいのです。でも、実家の周りは住宅地で、玄関を出てちょっと顔を上げると、自宅から見るより暗い空を見ることができました。


春だったり、夏だったり、秋だったり、大晦日だったりしました。帰り道は、ほんの15分だったり、たった5分だったりしました。でも、何か楽しく清々しい気持ちで歩いたことを思い出します。