つっぴ君と カメラ!カメラ!カメラ!

つっぴ君は、カメラが好きでした。大きな一眼レフのカメラを持っていました。


アルバイトで貯めたお金で買ったのだと思います。大学時代は授業でも写真の撮影や現像をしていたようでした。ライティングの勉強なのか、神妙な顔つきのつっぴ君が、いろいろな角度から光を当てられて撮られた連続写真もあります。自分で撮って自分で現像するのは楽しかったようで、学校で現像してきた大きな写真も何枚か残っています。


結婚してからは、家族や私との旅行にカメラを携えて出かけていました。いもうとたちの結婚式にもカメラを持ってきてくれました。結婚式ではテーブルについている暇がないほどの働きで、ごちそうをいつもの速さでかき込むと、花嫁や花婿、挨拶する親戚、歌う友人をカメラを抱えて追いかけていました。
つっぴ君が大きなカメラを構える姿はたいそう偉そうでした。うらやましかった私が「貸して貸して」と言うと「壊すからダメ」と、指一本触らせない構えでした。でも「変なとこいじるからダメ」とか「レンズに触るからダメ」と言いながら「ここは露光を調節するとこ」とか「シャッタースピードを変えるところ」とか「こっちが距離で、こっちは・・・」と、つい説明を始めると、最終的には「わかった?じゃぁ、撮ってみなさい」と先生然と私にカメラを預けてくれました。


私がカメラを構えると「脇をしめて!」と厳しい指導が入りました。私がカメラを首から下げていると「手を添えてて!」と、うっかり前屈みになってカメラをぶらぶらさせている私を叱りました。そうして出来上がった写真をテーブルに並べると「それで、君は何が撮りたかったの?」と作品の講評が始まるのでした。特にピンぼけ写真は厳しく原因を追及されました。「脇はしめた?」「半押しした?」つっぴ君の注意の全てに「その通りにしました」とうなずく私に「じゃぁ、どうしてぼけるの?」と刀を鞘に納めることをしないつっぴ君でしたが、あるとき私のピンぼけ理由が明らかになりました。


いもうとたちもカメラが好きでした。そのうちの一人がよく写真を撮ってはピンぼけさせていました。ある時など「花嫁を撮った」と言って「波だった海面のようなカーペット」写真を見せてくれました。みんなに「一体どうしたら花嫁がカーペットに?」と問いつめられて「しらないよ〜!」とじたばたしていました。そのいもうとが写真を撮る姿を見て、つっぴ君は気がついたのです。「どうして君たちはシャッターボタンを押す時、一緒に体も動いちゃうんや?」どうやら私たちは最後の最後に、体全体でシャッターを押していたようでした。


アルバムにあるつっぴ君のいい写真の多くは、会社の方によるものです。職場でのなんでもない様子や、飲み会での楽しそうな姿をたくさん遺していただきました。ちょっとしたお出かけや旅行、実家や自宅でのくつろいだつっぴ君の写真は、二人のいもうとたちの撮ってくれたものです。ただ猫をぶらさげていたり、ただ新聞を読んでいたり、ただお店をのぞいたり。ただそこにいるつっぴ君がたくさん残っています。



Flipper's Guitar - Camera! Camera! Camera! です。
http://www.youtube.com/watch?v=0d4IUa0pF70
ピンぼけ作家だったいもうとは、その後一眼レフを買い、旅行先のスナップや猫を相手に腕を磨き、職場でも撮影を任されるようになりました。