つっぴ君と 意外な弱点

つっぴ君は、あんなにこんがり小麦肌でありながら、肌は弱かったのでした。ちょっとした刺激で赤くなったり、小さな傷の跡がいつまでも残ったりしていました。


ある日、私はつっぴ君の腕に尋常ではない盛り上がりができているのを見つけました。何か大変な皮膚疾患ではないかと慌てている私を尻目に、つっぴ君は「蚊にさされた」とボリボリ掻いていました。私は掻いたりしてはいけないのではないか、病院へ行った方がいいのではないかと言いましたが、つっぴ君は「ムヒ取って、ムヒ」というと、無造作にムヒを塗り、スースーする感じを楽しんでいました。結局ムヒで落ち着いたので、虫さされだったのに間違いはありません。でも、普通の人の虫さされ跡が四国のような盛り上がりだとすると、つっぴ君のそれはゴンドワナ大陸のような規模を誇っていたのです。
その後もつっぴ君は頻繁に腕や足に失われた伝説の大陸大の虫さされを作っていました。腫れが大きい分、痒さも強かったようでした。いつも、より強いムヒを薬局で探していました。


ある日、つっぴ君は熱を出しました。つっぴ君は数年単位で必ず高熱を出したのです。この時も高い熱が出ていました。近所の病院で、風邪でしょうと言われて帰宅したつっぴ君は、着替えようとして「ちょっと!見て!」と大きな声を出しました。見ると、つっぴ君は手足の大部分に、今までにない大きな大陸を作っていました。私が思わず「きゃー!気持ち悪い!」と言うと「ひどいな!人が苦しんでるのに気持ち悪いなんて!!」と大激怒をしました。
再び訪れた病院で風邪薬の副作用の蕁麻疹でしょうと言われましたが、熱も下がらず蕁麻疹も消えないことに不安になったつっぴ君は、別の病院にも行ってみることにしました。女医さんがやっている、やはり近所の病院でした。女医さんは診察室に入ってきたつっぴ君を一目見ると「今、あなた、待合室にいた?」と聞きました。つっぴ君が「はい」と答えると「小さい子供いたでしょ。感染ったわねぇ」と言いながら、椅子に座ったつっぴ君に告げました。「あなた、三日麻疹ね」


女医さんの診断はぴたりと当たっていました。三日麻疹とわかれば、巨大な発疹ももう気持ち悪くはありませんでした。でも、つっぴ君は私が「気持ち悪い」と言ったことを、その後も相当根に持っていました。いつも以上に熱心に看病しましたが、つっぴ君のお冠が収まるのには、結構時間がかかりました。


それからずーっとあとになって、私に薬の副作用で大規模な蕁麻疹がでたことがありました。首から下のほとんどに出たのです。「きゃー!見て!!」と叫ぶ私に、つっぴ君は「わっ!気持ち悪い。しまって、しまって」と言いました。仕返しではありませんでした。自然と出た言葉だったと思います。私はそれを聞いて「ほらー、普通こう言うって・・・」と、あの時のつっぴ君に心の中で言い訳をしたのでした。