つっぴ君と お買い物のおつきあい

つっぴ君は、お買い物には必ずついてきてくれました。ただ夕方、近所の生協に行くのでも「へーい」と返事をすると、そそくさ起き上がり付いてきてくれました。


スーパーには魅力的な商品がたくさん並んでいました。でも、つっぴ君が「おお!」と胸をときめかせてカゴに入れた食品は、しばしば後戻りをして棚に戻される憂き目にあいました。お惣菜コーナーでカツを手に取り「今日はカツ丼!」と声を大にして訴えても、「白菜が残ってるから八宝菜です」などと、1mの斟酌もなく却下されました。それでも、つっぴ君はお買い物には欠かさず付いてきてくれました。


私がカートを押そうとすると「代わりなさい」とカートを押し、「カゴ持ってきなさい」とカゴをセットさせ、さっさとカートを押して出発しました。私がカゴの中の品物の並び方が気になって、何度も並べ直していると、横を向いて笑って私の気が済むのを待っていました。レジに到着するとカートを私に引き渡し、店頭で一服しながら会計が終わるのを待っていました。会計が終わる頃を見計らって、店内に戻ると、大きなパッキングスペースで何度も品物を袋に入れ直す私を見ては、笑いをこらえて近寄ってきました。あるとき、つっぴ君はやはり何度も品物を袋に入れ直す私に「おにいさん、もう一発で君の気に入る袋詰めが出来る気がする」と言って、ぷーっと吹き出していました。


袋に品物が納まると「貸しなさい」と手を出しました。袋が一つの時は片手を出し、袋が二つの時は両手を出しました。三つ以上の時は一つずつ持って重さを確認すると「はい」と一番軽い袋を私に渡してくれました。両手に重い荷物を下げて歩くつっぴ君に「おねぇさんも持つ」と何回も手を出しましたが、つっぴ君は首を振るだけで荷物は渡してはくれませんでした。あるとき「絶対に私が持つ」と言い張ったことがありました。つっぴ君は「ほれ」と荷物を私に持たせると、しばらく黙って横を歩いていました。数メートル歩いたところで「ほらな」と急に口を開き、言いました。「歩く速度落ちとる」結局「君に荷物持たせると帰りが遅くなる」という理由で荷物は取り上げられてしまいました。


猫のトイレの砂が「固めて捨てるタイプ」だった頃、私はスーパーで必要に応じてもらっていい半透明の袋をいつも必要としていました。ロールになっているのをころころ引き出して好きなだけ取れるものです。その袋に、買った全ての品物をいちいちいれている私を見て、つっぴ君は「君、何しとるの?」と尋ねました。袋は欲しいのですが、使いもしない分までころころひっぱりだす訳にはいかないので、とりあえず全部「使っている」のだと説明すると、つっぴ君はやっぱり大きく吹き出しました。その後、猫のトイレの砂がニュータイプになり、私はその袋に執着しなくなりました。あるとき、つっぴ君は品物を袋に入れる私を見て、思い切り思い出し笑いをしたかと思うと言いました。「君、この袋にそれ、いれなくっていいの?w」


ころころ袋を引っ張りだしていた私の様子はよほど浅ましく滑稽だったのでしょう。思い出して笑うほどかと思うと、恥ずかしいかぎりです。