つっぴ君と 夏のお出かけ

つっぴ君は、暑いのが苦手でした。夏バテするとかということではなく、人一倍暑がりだったからです。


エアコンの効いた室内で、ごろごろ過ごすのが好きでした。
帰宅すると、たまに冷えたビールを飲むのが好きでした。
アルコールを止められてからは、帰り道に時々ノンアルコールビールを買ってきて、ご飯の前に「ぷはー」っと飲み干していました。


夏にわざわざ外出するなんて、とんでもないと思っていたようでした。でも、プールへ行くのは好きでした。それだけ出かけるのが億劫なら近場のプールでもいいはずなのに、プールとなると大磯やよみうりランドサマーランドまで行くのも厭いませんでした。ただ一つつっぴ君が困ったのは、毎年水着が窮屈になっていったことだけでした。


暑いと言いながらも夏祭りにも行きました。季節のものなので、屋台の焼きそばの類いが食べたければ、夏祭りでもなんでも行かざるを得なかったのです。一時話題になっていた麻布十番の夏祭りにも行きました。多国籍が売り物の夏祭りで、屋台には国際色豊かな食べ物が並んでいました。私はふだん目にもしないような異国の食べ物を買おうとしたのですが、つっぴ君は「もともと屋台向きの食べ物じゃないかもしれん。高温多湿の日本で安全性に疑問がある」という理由で「ぴーぴーになるからダメ」と許してくれませんでした。


最近では、近所の夏祭りでも国際交流の名の下に異国の屋台が出店しています。商店街にたこ焼き然としてケバブのお店があったりしますし、つっぴ君もその後「会社の飲み会でシュラスコ食べたで!」と言っていました。今なら初耳っぽいカタカナの屋台料理も許可が下りるのではないかと思っています。


それでも、きっとつっぴ君は私が並んで買ってきた異国の食べ物は食べなかったでしょう。「わ!変なはっぱがついとる!」とか「薬屋の匂いがする!」と言って敬遠し、私が食べると「わ!君、鼻からなんかでてきとる!!」などといわれのない言いがかりをつけては、笑ったろうと思います。