つっぴ君と 師匠としての適性

つっぴ君は、人に何かを教えるのが、たぶん上手でした。
そういう場合には、内容や説明の方法、手順などの準備をし、一から積み上げるように説明していくのが、つっぴ君のスタイルでした。確実に正確に伝えることを大事にしていたと思います。
相手への責任感もあったと思いますが、自分が教えるんだからという自負もあったのではないでしょうか。


ただ、家ではその適性は発揮できていませんでした。
面倒見のよさがあだになって「あぁ、もう、おにいさんがやっとくから」となってしまうのです。
その傾向は私がパソコン関係の質問をした時に、顕著に現れました。
「ここ、どうするの?」と聞くと、それまで座椅子に転がってテレビを観ていたはずなのに速やかに背後に回り「何したいの?」と聞き返す時には、もうマウスを私から取り上げていました。あーしたい、こーしたいと私が話すうちに、どんどん作業を進め、修正も入り、そのうち「ふんふん」言いながら、私から椅子もパソコンも取り上げるのです。
私はしばらくは後ろで正座をして、つっぴ君の作業を見守りますが、やがて待ちくたびれ、ちょっと出していたやる気も薄れ、座椅子に寝転がってテレビを観るはめになりました。
そうして私が学べるレベルを遥かに超えた物を完成させた後、やおら「こっち、来なさい」と説明を始めるのですが、その頃には私はもう取り返しがつかないほどの馬の耳に念仏状態に陥っているのでした。


会社の方に、つっぴ君が後輩指導の講座を開いていたとうかがった時は、とても嬉しかったです。
会社に入るまでのつっぴ君は、たとえ自分に出来そうなことでもすすんで何か教えたり、指導したりということが得意ではなかったと思うからです。誰かが出来ないことを抱えている時には、聞かれれば丁寧に教えるのですが、たいていはこっそり手伝ったり、あるいは代わって全部一人でやってしまったりするのが、つっぴ君でした。
きっと、つっぴ君も先輩方にたくさん教わって、助けられたのですね。「代わりにやってあげる」から変われたのは、つっぴ君にとって会社がとてもリラックスして過ごせる場所だったからだと思います。